保険で準備する死亡保障額は?!

生命保険に加入する際には、「死亡保障」や「医療保障」の額をいくら準備するかなどを検討しますが、「今の自分にとって、これだけの保障額が必要だ!」と確信している人は決して多くありません。殆どの人は、保障額を決める際に「一般的にはどの程度が必要でしょうか?!」とか、保険会社の営業の担当者の人に「一般的には、この程度が必要ですね!」と言われたから、といった理由が大半を占めると思われます。

しかし、必要となる保障額は、家族の状況などによって大きく異なります。

必要となる死亡保障額は、どのように計算するの?!

生命保険の「死亡保障額」とは、「万一自分が死んだら、いくらの保険金を遺族がもらえるのか?」というものです。この場合の必要となる死亡保障額は、「配偶者や子供がいる人」と「単身者の人」に大別されます。

配偶者や子供がいる人の死亡保障額の目安とは?!

配偶者や子供がいる人の場合は、「配偶者が専業主婦の場合」と「配偶者が共働きの場合」に区分されます。また、お住まいが「持ち家」なのか「借家(賃貸)」なのかによっても異なります。

1.配偶者が専業主婦の場合の死亡保障額の目安について

配偶者の方が「専業主婦」の場合は、ご自身(世帯主)の収入で家族の経済的支出のすべてを賄わなければなりません。よって、準備する死亡保障額は、ご自身(世帯主)に万一の事があった場合の、「①家族の生活費」と「②住居費」および「③子供の教育費」となります。

それでは、その目安額とは、どのように計算するのでしょうか?

(1)家族の生活費について

家族の生活費は、「毎月の生活費×必要となる月数」で計算します。

この場合の「必要となる月数」は、ご自身の希望で設定して頂いて構いませんが、仮に40歳の方が「毎月の生活費を20万円」、「必要となる月数を配偶者が亡くなるまでの期間(40年:600月)で設定した場合には、「20万円×600月=1億2,000万円」となります。

そうなると、保険料(掛け金)も高くなりますので、一般的には子供が独立するまでの期間とするのが適正と考えます。

子供が生まれてから独立(大学を卒業)するまでの期間は「22年(264月)」となります。そうなると、子供が生まれた時点で必要となる家族の生活費は、「20万円×264月=5,280万円」となり、その後は、子供の成長に応じて、必要となる生活費は毎年減っていくことになります。よって、子供が独立した後は、大きな保障は不要となります。

(2)住居費について

住居費については、お住まいが「持ち家」なのか「借家(賃貸)」なのかによっても異なります。

持ち家の人の場合、住宅ローンを利用して住居を購入された場合には、「団体信用生命保険」に加入するのが一般的です。「団体信用生命保険」は、簡単にいえば住宅ローンの名義人が死亡した場合、その後の住宅ローンの返済義務が免除される保険です。よって、持ち家の人の場合、住宅ローンの名義人である世帯主本人に万一のことがあった場合には、残された家族には住宅ローンを返済する必要はありません。よって、住居費を保険で準備する必要はありません。

一方、「借家(賃貸)」の場合には、少なくとも子供が生まれてから独立(大学を卒業)するまでの期間の家賃相当額を準備しておく必要があります。仮に家賃を10万円とした場合には、「10万円×264月=2,640万円」の住居費相当額を保険で準備しておく必要があります。

(3)子供の教育費について

文部科学省の統計による「子供の学習費調査」などによれば、学校種別ごとの年間の教育費総額(単位:円)は下記の通りです。

区分

幼稚園

小学校

中学校

公立

私立

公立

私立

公立

私立

学費総額

222,264

498,008

321,708

1,535,789

481,841

1,338,623

区分

高校

大学

公立

私立

公立

私立

学費総額

409,979

995,295

535,800

1,050,555

http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/1364721.htm

幼稚園から大学まで、すべて私立に通うとなれば、教育費の総額は「約2,200万円」が必要となりますが、高校までは公立、大学を私立に通う場合には「約927」万円となります。

どの程度の教育費を準備しておくかは、進路によって大きく異なりますが、少なくとも「1,000万円」程度は準備しておく必要がありそうです。

2.配偶者が共働きの場合の死亡保障額の目安について

配偶者の方が「共働き」の場合は、ご自身(世帯主)と配偶者の収入で家族の経済的支出を賄うことになります。よって、保険で準備する死亡保障額は、基本的には「①家族の生活費」と「②住居費」および「③子供の教育費」ですが、配偶者の方が共働きの場合には、前述の「配偶者が専業主婦の場合の死亡保障額の目安について」の「①家族の生活費の50%相当額」、および「③子供の教育費」の準備で十分だと判断しますが、この部分の保障額については個人によって、意見が分かれるところです。

3.死亡保障額の目安は「公的保障」を考慮する

前述までの説明で、ご自分に必要な死亡保障額を見積もられたと思われますが、この保障額のすべてを保険で準備する必要はありません。ここから、ご自身(世帯主)に万一のことがあった場合に家族が受け取ることのできる「遺族年金(公的保障)」を考慮します。

公的保障の金額は、会社員(公務員を含む)の方と自営業者の方で異なります。

(1)会社員(公務員を含む)の方場合

会社員(公務員を含む)の方の場合、万一のことがあった場合の遺族年金は「①遺族基礎年金」および「②遺族厚生年金」、「③中高齢寡婦加算」で構成されます。それぞれの受給の目安額は下記の通りです。

①遺族基礎年金:779,300円/年(平成29年度価額)+子の加算

子の加算額は、第1子および第2子は「各224,300円」、第3子以降は「各74,800円」です。

仮に、子供が2人の場合には、「1,227,900円(779,300円+224,300円×2人)」が受給されます。

②遺族厚生年金:正確な受給見込み額は、年金事務所で確認できますが、自分で計算する場合の概算額は下記の要領で計算します。

「現在の年収÷12×5.481÷1,000×被保険者月数×4分の3」

※被保険者期間が300月未満の場合は300月

仮に、年収600万円で、被保険者期間が20年(240月)の場合には、下記の通りとなります。

 600万円÷12×5.481÷1,000×300月×≒616,600円/年

③中高齢寡婦加算:584,500円/年(平成29年度価額)

「①遺族基礎年金」は、子供が高校を卒業する(18歳年度末)まで受給され、「②遺族厚生年金」は生涯受給できます。「③中高齢寡婦加算」は、子供が高校を卒業した(18歳年度末)以降は、「①遺族基礎年金」が支給されないので、支給停止に伴って、配偶者が65歳になるまで支給されます。

仮に年収600万円で、被保険者期間が20年(240月)の人で、子供が2人の場合であれば、生まれた時点で高校卒業までの期間で受け取れる遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給額の概算額は下記の通りです。

・ 遺族基礎年金:1,227,900円×18年=14,734,800円

・ 遺族厚生年金:616,600円×18年=11,0988400円

・ 合計:25,833,600円

子供が高校を卒業した後、65歳までの期間は「遺族厚生年金と中高齢寡婦加算」が受給できますが、仮に子供が高校を卒業した年齢が45歳であれば、「20年間(65歳-45歳)」で受け取れる遺族厚生年金と中高齢寡婦加算の受給額の概算額は下記の通りです。

・ 遺族厚生年金:513,800円×20年=10,276,000円

・ 遺族厚生年金:616,600円×20年=12,332,000円

・ 合計:22,608,000円

以上より、65歳までの遺族年金(公的年金)の受給総額は「48,441,600円」となりますので、これを必要保障額から差し引きます。

(2)自営業者の方場合

自営業者の方の場合、万一のことがあった場合の遺族年金は原則として「遺族基礎年金」のみとなりますので、受給の目安額は下記の通りです。

・ 遺族基礎年金:1,227,900円×18年=14,734,800円

よって、会社員の方に比べると、保険で準備する保障額は多くなります。

公的保障を考慮した死亡保障額の目安について

前述までの死亡保障に公的保障を考慮した場合の死亡保障額の目安額は、家族構成により異なりますので、下記のモデルケースで必要保障額を計算してみます(遺族年金の詳細な計算過程は省略)。

本人(会社員)および配偶者(専業主婦)35歳、子供2人(7歳および5歳)

年収600万円、住居は持ち家(住宅ローンあり、団体信用生命保険に加入)

①遺族の生活費:4,080万円(末子が独立するまでの17年(204月)×20万円/月)

②遺族の住居費:ゼロ

③子供の教育費:2,000万円(1,000万円×2人)

必要保障額の合計:6,080万円

公的保障の額:①遺族基礎年金:15,514,100円

       ②遺族厚生年金:18,498,000円

       ③中高齢寡婦加算:9,936,500円

          公的保障額の合計:4,394万円

以上より、必要保障額は「1,686万円(6,080万円-4,394万円)」となります。

この金額から、更に貯蓄額や会社から支給される死亡退職金や弔慰金、学資保険などの受給見込額を差し引いた金額が、保険で準備する「適正な死亡保障額」となります。

この「適正な死亡保障額」を基準に、上乗せする保障額を検討して頂ければ結構です。

単身者の死亡保障額の目安とは?!

単身者の死亡保障の目安としては、死後整理資金(いわゆる葬式代)を準備しておけば十分と考えます。目安としては、300万円程度です。

ただし、単身者の方であっても、両親の生活費や介護費用を負担する必要がある場合については、それ相当の死亡保障額を準備しておく必要があります。

ただし、繰り返しになりますが、一定の貯蓄があれば死亡保障を保険で準備する必要はないと判断します。

さて、みなさんにとって必要となる死亡保障額はいくらになりましたか?

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